| Q: | 本規格が実際の現場でどこまで適用できそうか? |
| A: | 装置によっては条件を満たすことができているかどうかわからない部分もあるので,全ての装置で適用できるかというと,やや疑問な点もある. |
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| Q: | 装置によっては本規格の適用が難しい点があるとのことであるが,適用するのを難しくしている最も大きな要因の一つは何か? |
| A: | メーカーや装置によるが,一般的に一次イオン電流の測定が難しいことが理由である.ファラデーカップが標準でついている装置では一次イオン電流を測定できる可能性があるが,ついていない装置では非常に難しく,特に試料ホルダーからの試料電流では測定値が一次イオン電流として正しいとは言い難い.また,一次イオンを直流で照射している場合はイオン電流を測定できるが,パルスにすると0.1 pAという,装置搭載のピコアンペア計では安定に再現性よく測定できない低いオーダーになってしまうため,一次イオン電流値の評価が難しい. |
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| Q: | 本規格では,一次イオン電流値として0.1 pA以下という安定に測定できない低い値が規定されていることになるが,そのような状況でも実用レベルで本規格を用いるにはどうすればよいか? |
| A: | スタティッックリミットを満たす十分低い一次イオン電流(電流値そのものは不確かでもよい)で測定し,繰り返し性と恒常性を確認するとよい. |
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| Q: | 手順は今回の紹介でトレースできそうだが,規格の中に再現性や恒常性の値について,この範囲までなら許容できるといった指針は示されているか? |
| A: | 規格内では特に示されていない.恒常性の評価指針は実施する側で設定する.規格内の文献 [1,2] に例がある. |
| | [1] I. S. Gilmore and M. P. Seah, “Static SIMS inter-laboratory study”, Surface and Interface Analysis, 2000, Vol. 29, pp. 624-637. |
| | [2] I. S. Gilmore, M. P. Seah, and F. M. Green, “Static TOF-SIMS - a VAMAS interlaboratory study. Part 1 Repeatability and reproducibility of spectra”, Surface and Interface Analysis, 2005, Vol. 37, pp. 651-672. |
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| Q: | テキストにある管理図の許容限界は? |
| A: | 文献 [3] からの引用であるが,許容限界は10%に設定してある. |
| | [3] F. M. Green, I. S. Gilmore, J. L. S. Lee, S. J. Spencer and M. P. Seah, “Static SIMS-VAMAS interlaboratory study for intensity repeatability, mass scale accuracy and relative quantification”, Surface and Interface Analysis, 2010, Vol. 42, pp. 129-138 |
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| Q: | 繰り返し性に影響を与える因子にはどのようなことが考えられるのか?また気をつけるべきなのか? |
| A: | 比較的影響が大きいと感じるのは試料帯電の補正とダメージの様に思う.ダメージには真空中での揮発も含まれると感じている.中和に用いる電子線でもダメージを受けてピーク強度が変動する材料があるように感じる.Static Limitを超えない範囲で少し測定時間を変えて測定してみて,あまり大きな変動がないことを確認することもある. |
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| Q: | スピンコートした膜で評価する場合は安定したサンプルなので問題ないとは思うが,実試料,例えば表面処理した数ミクロンのポリマー粒子の表面解析を行う場合などでは,サンプリングの仕方が繰り返し性に影響を与えることがあると思う.そのようなサンプルを繰り返し性よく測定するためのサンプリング方法がもしあれば教えていただきたい. |
| A: | インジウム箔への埋め込みは比較的効果がある.表面処理したシリカは,薬さじの平らな面でこするように付着させたところうまく(平坦に)埋め込まれることがあった.また,赤外測定の様にペレットにして割断して測定したこともある.いずれも平坦な場所を測定(できるような場所を作る)することが重要なように思う.その際も帯電補正を確実に行う必要があると思われる. |
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| Q: | 本規格はD-SIMSを用いたSi中のBの深さ分析に限定されているが,広く用いられるようになってきたToF-SIMSを用いた深さ分析を行う上で役立つような情報は本規格に含まれていないか? |
| A: | Si中のB分析などの高感度分析はD-SIMSの独断場であるので,ToF-SIMSによる(D-SIMSに比べて感度が低い)深さ分析を行う上で本規格が参考となるような点を示すことは難しい.ただしバルク中の微量元素を対象とするときには感度補正係数の考え方などはそのまま使えるはずである. |
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| Q: | TOF-SIMSを使ったデプスでは主にデュアルイオンビームが採用されており,スパッタ用のイオン銃とSIMS測定用のイオン銃が異なる.イオン種によって二次イオン強度が変わり,ToF-SIMSの深さ分析もだいぶ高感度化が進展してきているのではないか? |
| A: | 本規格が規定しているSi中のBなど微量元素の検出感度については,やはりD-SIMSには適わない.むしろ,ToF-SIMSを使った深さ分析は,有機物のモレキュラーデプスプロファイリングをはじめ,主成分の深さ分析の用途にこそ有用と思う. |
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| Q: | スパッタ時間を深さに換算するためにスパッタ深さを測定する必要があり,そのために触針式段差計(スタイラス)がよく用いられるが,測定値のばらつきが非常に大きいことなどが問題となる場合が多い.この点に関して問題はないか? |
| A1: | できるだけスタイラスを用いたスパッタ深さ測定を精度よく行うために,メッシュレプリカを用いたスパッタ深さ測定法がISOで規定されており(ISO/TR 22335),このISO規格を用いるのが一つの方法である.またSIMSの場合は,何箇所かスパッタしてその深さを測って平均する方法を用いるとスパッタ深さ測定における誤差を抑えられる.しかしながら,いずれにしてもスパッタ深さの正確な測定は案外難しいと考えられる. |
| A2: | 本規格が作成された当時と比べて,最近のスタイラスは精度が高くなっている.XPSなどでもマスクを使って深さ分析を行えば,比較的正しくスパッタ深さを測定できる. |
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| Q: | Si半導体以外のデバイスにおける積層膜系でも,不純物として含まれるBの深さ分析が必要な場がある(ただしSi中のBに比べてB濃度がもっと高い).Si中のB分析だけでなく,そのような場合にもSIMSによる深さ分析が有効であるが,そういう場合に,この規格を参考にできないか? |
| A: | 本規格では注入量が明らかな標準試料を使ってバルク中の微量元素を定量する方法を規定しており,標準試料をそもそも用意できない系や,表面近傍の組成遷移層が問題となる極薄膜の場合には参考にはできないのではないかと考えている. |
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| Q: | 本規格を適用するために使用するべき多層デルタ試料について規格内で規定されているが,この規定に従って多層デルタ試料を作製・評価するのは非常に困難であり,購入等できるとよい.実際に入手するにはどうすればよいか? |
| A: | 規格では入手法は述べられていない.販売されているとは思うが,一般に購入すること難しい.実用的なスパッタ深さ分析の観点からも,このような多層デルタ試料は有用,不可欠であり,販売されるとよいと考えている. |
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| Q: | NISTなどの機関が標準試料を出しているが,SIMS用の標準試料は存在しないのか? |
| A: | いまのところ,SIMS専用の多層デルタドープ標準試料として容易に入手できるものは存在しない.日本のSIMS-WGで作製したデルタドープ試料の販売を表面分析研究会(SASJ)で行うことが検討されており,販売される可能性がある. |
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| Q: | デルタドープ層の位置の決め方として4つの方法が述べられているが,どの方法が一番よいか? |
| A1: | ピークトップをデルタ層の位置とする方法が最も使いやすい(安定に求められるという観点で).ただし,いずれの方法を用いても本来のデルタ層の位置とは違う値が得られるため注意が必要である. |
| A2: | 経験的に重心を用いるのがよい場合が多い. |
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| Q: | AESでも多層デルタドープ試料を高感度でスパッタ深さ分析できることが最近報告されているが,AESの場合はデルタ層の位置をどのように決めているのか? |
| A1: | まだAESによっても検出できることが分かった段階である.どのようにデルタ層の位置を決めるかなどは難しい問題のため,現在はデルタ層の位置を決めたりスパッタレートを求めたりはしていない.今後議論する予定である. |
| A2: | ピークトップで決めると,測定ごとに位置が異なってしまう場合があるので注意が必要である. |
| A3: | SIMSはAESやXPSに比べてデータ点が多くダイナミックレンジも広いので,ピークトップでデルタ層の位置を決める方法が使いやすい. |
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| Q: | 例えばSi/Ge多層膜のSIMSプロファイルなど,界面に異常ピークが現れる場合があるが,このような場合にはどのように界面位置を求めるのがよいのか? |
| A1: | 例えばピーク位置を界面位置と決めるなど,常に同じ定義を使うのが再現性という観点からよいと考えられる.ただし,本来の界面位置ではない点には注意する必要がある. |
| A2: | 界面位置の決め方については,現在AES,XPSに関するISOを議論している委員会で検討している.表面分析研究会の会員を対象に「日常の分析において,どのように界面位置を決めているか?」などについてアンケートを実施する予定であるので,是非本アンケートへ回答していただきたい.その回答が将来のISO規格に採用される可能性もある. |
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| Q: | ToF-SIMSによるスパッタ深さ分析において本規格が参考となる点はあるか? |
| A: | 本規格で規定されている多層デルタ構造はToF-SIMSにおいても有効であると考えられる.有機膜で構成されるデルタ層のような試料ができれば非常に便利であり,実用分析レベルで,本規格を参考に用いることができると考えられる.ToF-SIMSの場合の有機物デルタ層試料では,D-SIMSで用いられる多層膜試料よりも,もう少しスペーサーの厚さが厚い方が使いやすい.ただし有機物分析の場合は,モレキュラーデプスプロファイリングを実施できる装置が限定され,まだ汎用化には遠い状況である. |
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| Q: | スパッタ深さ分析後のスパッタ深さを測定するためにメッシュレプリカ法を試みたことがあるが,例えばアルミホイルを被せてホルダーへセットした時に試料との間に隙間があいてしまい,うまくいかないことが多い.どうすればよいか? |
| A: | 手袋をはめた手で,アルミホイルごとメッシュを試料へ押さえつけて密着させるとよい.スパッタ深さプロファイルを測定して,メッシュのある場合と無い場合でプロファイルに差がなければ,手で押さえても問題なく測定できていると考えられる. |
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| Q: | 今回紹介された規格のようにスパッタ深さの絶対値を計測することは,日常の分析で必要となることが多いか? |
| A1: | 日常的には,SiO2換算のスパッタリングレートを用いることが多い.このときスパッタ時間を深さに換算するためには,相対スパッタリングレートが必要となるが,通常は表面分析研究会のWeb [Sputter Etching Rate Database (SERD)] から入手したりする.ただし,日常業務でよく測定する測定系については,実際のスパッタレートをメッシュレプリカ法で求めておくべきだと考えてはいる. |
| A2: | 最近は複合材料も多く,試料の構造・組成やスパッタリング条件によってもスパッタリング収率が変わってしまうため,これまでのように単膜のスパッタリング収率を用いることにあまり意味が無くなっている.また,例えば試料の熱処理の有無などによるプロファイルの違いなど,日常業務ではプロファイルそのものを議論するほうが重要な場合も多い. |
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| Q: | 界面深さ位置を測る手法としてXRFや化学分析が含まれているが,これらの手法でどのように界面位置を決めるのか? |
| A: | 全量を溶かした化学分析など,膜厚を決める手法として掲載されていると考えられる. |
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| Q: | Inへの埋め込みによって帯電を抑えて測定する手法が紹介されたが,埋め込み法はInに限定されているのか? |
| A: | 限定はされていないが,Inは柔らかくて埋め込みをしやすいため一般に用いられている. |
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| Q: | 帯電が生じたときの二次電子収率曲線の変化はどのように理解すればよいのか? |
| A: | もともとの曲線(破線)に対して,帯電が進むと二次電子が出にくくなったり出やすくなったりするため,二次電子収率曲線が変化する.AESでは多くの場合,p.
6-10上段の図に示すように全エネルギー領域にわたって は小さくなる方向に進む.これは, > 1で表面が正帯電している場合に内部で生成した電子が表面から飛び出すとき,その正電荷にトラップされることによって二次電子が減り,ゆえに
が小さくなるためである. |
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| Q: | Inへ埋め込む時に乳鉢ですりつぶすのはなぜか? |
| A: | 粉末試料の場合に,粉末の表面と内部で組成が違う時などに,粉末の全体的な情報を得たいときは乳鉢ですりつぶして分析する方法をよく用いる.逆に粉末の表面の組成を知りたいときなどは,すりつぶさないで分析する. |
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| Q: | 帯電を抑えるために用いている導電性グリッドは装置についてくるものなのか? |
| A1: | 多くの場合,TEM用に販売されているメッシュを利用している. |
| A2: | 自分でアルミホイルに穴をあけてメッシュ代わりに用いるとよい.ピンセットで穴を開ける方法がよく用いられるが,シャープペンシルの先端を使うと比較的きれいに穴があく. |
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| Q: | 帯電が起きるために普通の方法ではうまく測定できない試料に対していろいろと工夫した結果上手く測定をできた時は,なかなかそのノウハウを公開できないと思うが,どうか? |
| A: | 会社として公開してよい範囲で公開するしかない. |
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| Q: | 一次電子線のデフォーカスによって帯電を避けるときは,そのフォーカス量はどのようにして確認するのか? |
| A: | 測定後のSEM像で確認している. |
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| Q: | SiO2/Si試料で界面位置を求めるときに酸素の深さプロファイルから界面位置を決めているが,Siは使ってよいか? |
| A: | Siはケミカルシフトの影響が大きいためあまり使わないようにしている. |
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| Q: | Siのプロファイルと酸素のプロファイルで界面位置がずれているが,例えば面積を強度でとれば,そのようなずれは無くなるのか? |
| A: | ピークによって電子のエネルギーが異なるため情報深さが違うので,殆どの系で,界面位置を決めるのにどのピークを用いるかで界面位置が変わってしまう.まだ界面位置の決め方に関する国際規格はなく,現在,国際規格作成に向けて議論が進められているところである. |
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| Q: | ザラー回転とは? |
| A: | 試料ホルダーが回転する.試料表面が表面内でまわることで,試料表面へイオンが色々な方向から照射されて表面荒れが抑えられる手法である. |
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| Q: | Ta酸化物は標準試料として用いられているが選択スパッタが起きる系である.標準試料として問題はないか? |
| A1: | 最表面近傍をスパッタしている時に選択スパッタによって変化するが,すぐに安定になって変化しなくなるので,その点を除けば使える. |
| A2: | スパッタによって酸素が抜けてTaの価数が変わっても,XPSでは面積をとるので,あまり影響はないようである. |
| A3: | 多結晶のTa酸化膜試料の場合,表面にグレインバウンダリーが存在するため,オージェで分析すると,グレインバウンダリーに電子線があたって再現性のない結果が得られてしまう.そのため多結晶のTa酸化膜は標準試料としてあまりよい試料とは考えていない. |
| A4: | Ta酸化膜の質は作製法に強く依存するので注意が必要.深さ分析用の標準試料としてはアモルファスがよい. |
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| Q: | 深さ分解能の点では,JISでも規定されているように一般には脱出深さが浅いピーク(運動エネルギーの低いピーク)を使った方がよいので,O-KLLによるプロファイルよりもSi-LVVでプロファイルを描いた方が深さ分解能という意味ではよいのではないか? |
| A: | Siはケミカルシフトが大きいので酸素を使うようにしているが,当然,Si-LVVを用いた方が深さ分解能は高い. |
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| Q: | SiO2のスパッタ深さ分析の場合,SiO2膜の損傷によって酸素が減少する場合があるが,電子線ダメージはどのように考えるのか? |
| A1: | イオンによる損傷と電子線による損傷がある.電子線ダメージをできるだけ減らして測定している.電子線は走査するよりもデフォーカスでダメージを減らしている. |
| A2: | 絶縁物のAES分析では,走査面積で電流密度を変えると操作領域内で不均一帯電を起こすため,一般にデフォーカスさせて電流密度を下げる方がよいとされている. |
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| Q: | 標準試料の表面汚染はどのように取り除いて分析を行うのか? |
| A: | 厳密には取り除いた方がよいが,必要な場合以外は行わない.酸化物表面の汚染(主に炭素)を除去するときは試料加熱をよく使う. |
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| Q: | 表面汚染の不均一性は気にする必要はないか? |
| A: | 難しい問題ではあるが,例えば多層膜を使えば,1層目は参照値で2層目以降しか値付けされていないので,表面汚染が気になる場合は多層膜試料を用いるとよい. |
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| Q: | 定量分析の際,3種類ある感度係数のうちどれを用いるとよいか,という判断基準はあるか?また,定量値の精度を報告することはできるか? |
| A1: | 基本的には平均マトリクス相対感度係数または原子相対感度係数を用いるのがよいとされている.他の測定法,例えば蛍光X線などを用いてバルクを定量できる場合,その値を参考にして,各相対感度係数で得られた値からどれを用いるかを判断するのも一つの方法である.ただし,表面とバルクで組成が同じとは限らず(多くの場合異なる),表面の組成を絶対的に定量する方法もないので,どの値が正しいかは評価できない.少なくともISO規格であるので,「ISOに規定されている手順に従って○○感度係数を用いて定量したら組成が△△と得られた」と報告するべきである. |
| A2: | 定量値の精度は評価できない.一番の理由は表面の組成を絶対的に評価する手法がないためである.報告では,ISOで述べられている通り,平均マトリクス相対感度係数の場合の「ばらつきは○○%」という風に報告するのがよいと考える.ただしこの平均マトリクス相対感度係数の「ばらつき3%」そのものは一種のトリックで求められた値であり,組成の真値からのばらつきが3%という意味ではないことは注意する必要がある. |
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| Q: | 平均マトリクス相対感度係数は,図中のヒストグラムが世の中のすべての元素をカバーしていると仮定しているために精度が高いのか? そうであれば,常に平均マトリクス相対感度係数を使用するほうが良いのか? |
| A: | 日常的な業務を考えると,元素相対感度係数よりも原子相対感度係数の方が簡単な計算で精度が上がるので,元素相対感度係数よりも原子相対感度係数を用いるほうがよい.平均マトリクス相対感度係数はISOで推奨されているが,計算の手間が莫大で,かつ定量値の精度がどの程度上がったかも評価できないので,ルーチン業務では原子相対感度係数がよいというのが講演者の率直な意見である. |
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| Q: | 平均マトリクス相対感度係数を用いたときに,例のように2種類の金属からなる合金の密度がそれぞれの純物質の間にない場合,密度として間の値を用いる方がよい定量値を与えるのではないか? |
| A: | 密度だけでなく非弾性平均自由行程も同じで,単純にはこれらは合金を構成する2種類の純物質に対する値の間にくるのが妥当である.おそらく間の値を用いると定量値は高くなると推定されるが,その場合,密度や非弾性平均自由行程にその値を用いた根拠がないので,ISOに準拠した定量を行うのであれば,やはり平均マトリクスに対する値を用いるべきである. |
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| Q: | 金属酸化物などの化合物を定量する場合,単体の標準試料を用いるのがよいのか?それとも化合物がよいのか?例えば,純金属と酸化物金属では金属原子の原子密度などが異なるが,そういう点は問題にならないのか? |
| A: | 化合物と純物質との原子密度の差は,元素相対感度係数を求めるときに化合物における元素の組成Xiで補正をするので,原理的には純金属でも化合物でも良い.同じ理由で,原子相対感度係数の場合も問題ない.ただし元素相対感度係数を求めるときに参照試料中のi元素の強度Iirefを考えると,定量する未知試料と近い参照試料を用いた方が,Iirefそのものが未知試料と似たマトリクス効果を含むことになるため,定量する未知試料と似た標準試料を用いた方がよいと考えられる. |
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